(JAきたみらい)横田さん:本日は、『きたみあずき屋』についてお伺いさせてください。ずばり『きたみあずき屋』とは何ですか?

渡辺社長:今年の9月8日で、清月が創業して、ちょうど80周年を迎えます。私の心の根底にずっとあるのは、80年もお菓子だけを作り続けて、商売を続けてこられたのは、やはり地元の皆様のおかげだということなんです。じゃあ、その80周年という記念すべき年に何ができるのかと考えたときに、地元地域で作られているお菓子にとって大事な原材料が何かないかなと。昭和10年にこの場所でお店がオープンして、いちばん最初に並んだ商品というのが「薄荷羊羹」だったんです。この商品は、創業してからずっと作り続けている唯一の商品なんです。

横田さん:創業当初から薄荷羊羹が販売されていたんですね。

渡辺社長:そうですね。ということは、もう80年間も、小豆を使ったお菓子を作っているということになります。

(JAきたみらい)丸山さん:この薄荷羊羹の小豆も昔から北見産のものを使用されていたのですか?

渡辺社長:おそらくそうだったのだと思います。残念ながら、昔の記録は残っていないんですけどね。80年前に北見で小豆が作られていたかどうかというのもわかりません。おそらく道内産の小豆だというのは間違いないかと思うんですが。創業した昭和10年は、北見の薄荷が最盛期の頃ですから、薄荷は地元のを使っていたと思います。

じゃあ、今、北見で小豆ってどれだけ作られているのかと思ったときに、恥ずかしながらぜんぜんわからない。それで、(JAきたみらい)流水さんのところに話を聞きに行きました。僕は、北見で小豆を作っている農家は5~6戸くらいかなと思ってたんですが、なんと100戸くらいで作っているということで、ちょっと怒られました。「馬鹿言わないで。5~6軒なわけないでしょ。」と(笑)。

それだったらと、「サンプルを分けてほしい」と早速お願いしました。 (JAきたみらい)古屋さんを通じてテストして作ってみたら、うちの職人からすぐ電話がかかってきましてね。「おいしい」って。「いい小豆だ」って。おお、それでは北見産の小豆を使って新商品を作ってみようか!となったわけです。

「食べておいしかった」という職人のひとことがきっかけで背中を押されました。そこで生まれたのが『きたみあずき屋』のコンセプトです。北見産の小豆を使ったお菓子のシリーズです。

横田さん:『きたみあずき屋』には種類がたくさんあって驚いたのですが、作っていく中で難しかったこととか、苦労したことはありますか?

渡辺社長:今、ようかんを作ったりあんこを炊いたりしている職人は40年ほどおります。職人なので、僕が「こういうのを食べたい」とか「こういうものができないか」と話を持っていくと、大体チャレンジしてくれるわけですね。結構、無理難題も言うんですけど(笑)。プロですから、一生懸命やってくれています。

丸山さん:アイデアは温めていたのですか?

渡辺社長:『きたみあずき屋』コンセプトができあがったのは、ここ1年の話です。

ただ、その前から「こういうものを作りたいな」というアイデアというのは、常に引き出しの中にしまっていました。そこで「これでいくぞ」となったときに、いろいろぱっと出てきた感じですね。うちの会社の方針は「伝統を守りながら、新しいことに挑戦する」なんです。古いものをそのまま作り続けても、今の若い人たちにはなかなか受け入れてもらえないと思うんです。ようかんというのはとても古くからあるもので、室町時代からあるといわれています(現在の羊羹の形は江戸時代からといった諸説あり)。

横田さん:歴史のあるお菓子なんですね。

渡辺社長:はい。ずっと作られ続けているお菓子なんです。じゃあ、その要素を残しつつも、何か現代風のアレンジもしていきたいと。特に、ちっちゃなお子さんたちにも食べていただけるものって何かできないかなと。それで、ラインアップとしては、バラエティあふれるものをと考えました。たとえば、クッキーや、あとパウンドケーキに鹿の子豆をねりこんだものなど、色々チャレンジしていこうということですね。

横田さん:社長のイチオシはありますか?

渡辺社長:イチオシ。。。うーん、個人的には「あずき屋ようかん」がお勧めですね。これは、ようかんを作ってまわりを乾燥させるんです。砂糖のシャリシャリ感も楽しいです。

横田さん:わー。なんか、きんつばっぽくなっていますね。

渡辺社長:きんつばっぽいですね!

丸山さん:珍しいお菓子ですね。

渡辺社長:この八角形っていうのも、80周年なので、「八」にかけて型に流しました。さらに職人から「金箔をつけたい」というアイデアが出まして。これでようかんがものすごく華やかになって、ちょっと高級感も出たかな。「あずき屋どらやき」も面白いと思います。どらやきって、普通は「これくらいの大きさ」というのがあって、結構食べ応えがありますよね。一個食べると結構お腹いっぱいになってしまって、他のものにちょっと手を出しづらくなるような。。。だから小さくしてみました。

横田さん・丸山さん:すごくすごく、かわいらしいですね。

横田さん:パッケージにうさぎの絵柄が入っていますね?これは『きたみあずき屋』のイメージキャラクターですか?

渡辺社長:はい。文字よりも、こういう絵で表現するほうがわかりやすいかなと思い、この『きたみあずき屋』のために作りました。

横田さん:印象に残りやすいですね!

渡辺社長:うさぎの焼印を作って「あずき屋どらやき」には一個ずつ押しています。「かわいい!」という印象が、好きになるきっかけになればと願っています。

横田さん:「北見産小豆のここがおいしい!」を教えてください。

渡辺社長:一番みなさんにお伝えしたいのは、これなんです。北見の、地元の小豆がおいしいということを、やはり伝えたい。まず、食べて感じてほしいです。

有名な(笑)十勝の小豆もおいしいけれど、小豆は十勝だけじゃないよ、我々の住む北見の小豆も負けず劣らず、すごくおいしいよ、というのを、みなさんに協力してもらって、お菓子を通じて証明したいんです。ですから、北見で美味しい小豆を作っていただくというのは生産者のみなさん方の大切な役割です。そして、どういう食べ方ができるのか、北見の小豆の可能性を表現するのが、我々の仕事だと思っているんですね。

横田さん:これからの夢が広がりますね。

渡辺社長:これからも、北見地域で作られた原材料にこだわって、お菓子作りに生かしていきたいと思っています。今、たとえば、「麦チェン」など、地域の麦を使いましょうという時代になってきていますから、できるだけ地域で採れたものを使っていきたいと思っています。『きたみあずき屋』のお菓子は、オホーツク産の小麦粉を使っているんです。

横田さん:小豆だけじゃなくて、原材料のほとんどがこの地域で生まれたものなんですね。それでは、清月さんの今後の展望について教えてください。

渡辺社長:北見には、いろいろな農産物がありますよね。うちが今回焦点を絞ったのは小豆なんですけど、小豆以外にもたくさん魅力をもった産品があります。お菓子屋として、これからも、この北見で採れたもののおいしさを証明していきたいです。地域で生産したものを地域の人が使って、地域の人に食べていただいて、「おいしいからみんな食べてよ」とまわりに広まっていけばいいなと思っています。お菓子だけじゃなく、たとえばどこかのレストランとか居酒屋さんとかでも、「みんなでやっていこうよ」という動きができれば、ものすごく大きな力になると思うんですよね。

横田さん:おっしゃるとおりだと思います。北見の魅力を、協力しあってまず自分たちが知り、外へ伝えていけたらいいですね。渡辺社長、今日はありがとうございました。